久々のQuartet

2009年1月24日土曜日

T先生ご夫妻、チェロのMさんと2年ぶりくらいになるでしょうか、久々にカルテットを楽しみました.
クリニックを作る際に、待合室は椅子を片付けて室内楽が楽しめるようにと計画したのですが、その初めての機会となりました.響き的には少し響き過ぎかとも思いましたが、ヴァイオリンを弾く上では余計な力を抜いて、純粋にきれいな音を出すことに集中できる感じがありました.
手始めはT先生ご持参の鈴木メソッドのカルテット曲集からということで、皆初見でしたが、ぴたりと合い、さすが、鈴木メソッドと皆の感想も一致しました.
いよいよ本題ということでモーツァルト初期の四重奏からと思いきや、ビオラのパート譜が見つからず、初期から中期へ飛んでハイドンセットからC dur(K.465)の1楽章の冒頭、曲名の由来となっている「不協和音」の部分を弾いてみました.各パートとも譜面としては難しくないのですが、4人で合わせるとなると結構作りが凝っていてかなり手こずりました.そういう訳で「不協和音」はその先の主要部には進まず、以前にも挑んだことのあるd mol(K.421)にチャレンジ. 前回は自分としては全く歯が立たなかった記憶がありますが、今回は1楽章の2回の山場の2オクターヴを駆け上がり、駆け下りる部分を除いて、ほぼ弾けた手応えを感じました.
その余勢を駆ってベートーベンの作品18の1番ト長調、3番ト長調、4番ハ短調と次々に挑み、かなりテンポを伸縮させてしまいましたが、なんとか最後までたどり着くことができました.
気分を変えて、久石譲の映画「Qaurtet」のための音楽であるStudent Quartet(モーツァルト的な弦楽四重奏)、Melody Road(となりのトトロ、花火、キッズリターンなど久石メロディーのメドレー)を楽しんでいるうちにあっという間に3時間以上が経過してしまいお開きとなりました.
次回は是非、「不協和音」を全曲通したいなと思いますし、できればラベル、フォーレも出来るところだけでもやりたいな、などなど、やはりカルテットは楽しいですね.
(尚、上の写真は私の妻が撮影しました.)

人類の足跡 10万年全史

2009年1月15日木曜日

人類の足跡 10万年全史 スティーヴン・オッペンハイマー著 仲村明子訳
株式会社 草思社 ISBN 978-4-7942-1625-0

数年前、皇位継承問題で女性天皇を認めるかどうかということが話題になりました.その際に、女性天皇を認めないという理由として、これまでの皇位継承は神武天皇以来のY染色体を保持してきたのであり、ここで女性天皇を認めることは、これまでのY染色体のつながりを断つことになるという意見が述べられたのを覚えている方もあるかもしれません.
Y染色体は父から男児へと男系で伝達され、同様に細胞小器官であるミトコンドリアの遺伝子は母から女児へと女系で引き継がれてゆきます.
従って、Y染色体を遡れば遥か祖先の父親へ、ミトコンドリアDNAを遡ってゆくと、遥か祖先の母親へと繋がっていくことになります.
本書は、人類が10万年前にアフリカ(現在のエチオピア付近)の1系統から始まり、10万年ほど前にアフリカを出て世界中に広がって行く様子を、現在まで得られたY染色体、ミトコンドリアDNAを用いた遺伝子工学的な研究結果に基づいて述べています.
私はこの本を読んで、人類が元はと言えば1つの系統からでているまさに兄弟、同胞であることを改めて認識し、また、人類が地球の気候変動、火山噴火など大自然の現象に翻弄されながら地球全体に広がり、本当に運良く現在まで生き延びてきたものだと思いました.
本書は読者に人間に対するいとおしさ、国際紛争、人種差別などの愚かさを強く感じさせてくれるものと思います.

ウィーンフィル ニューイヤーコンサート

2009年1月1日木曜日

明けましておめでとうございます.本年もよろしくお願い申し上げます.
新春恒例のニューイヤーコンサートを見ました.今年の指揮者はダニエル・バレンボイムでしたが、私が印象に残ったことが3つあります.
まず第一は、ハイドンの交響曲第45番「告別」の第4楽章が取り上げられたのが珍しく、面白かったですね.曲の終わりに向かって、オーケストラのメンバーが次々と立ち去っていくというアイデア、このような形で自分の雇い主のエステルハージ侯に楽団員の早く夏の離宮エステルハーザから本来のアイゼンシュタットの宮殿に戻り家族と一緒に暮らしたいという思いを伝えようとしたハイドンの機智と勇気、いずれからもハイドンが素晴らしい人間であったことを伺い知ることができると思います.
2番目は恒例の「美しく青きドナウ」で小さなバレリーナ、バレリーノたちがとてもかわいかったですね.コンサートで実際に彼らが目の前に現れたらびっくりしますよね.私の記憶では(毎年そう一生懸命見ている訳ではありませんので間違っているかもしれませんが)あまりこのような演出は覚えておりません.
3番目は団員一同の新年の挨拶の前に、バレンボイムが「2009年が平和の年でありますように、そして中東に人間の正義(human justice)がもたらされますように」と言った言葉です.バレンボイムはユダヤ系のイスラエル人ですが、イスラエル人ということを超えて、人間の良心に基づいてこのような場でパレスチナ問題に対して発言をすることに深い意義があると思いました.
暗いニュースばかりが多い毎日ですが、ここまで世の中の基本的なメカニズムがうまく働かなくなってくると、逆に、新たな仕組み、枠組みが出てくるチャンスは大きくなってくるのではないかと思います.明るい希望を持って、本年も過ごしてゆきたいと思います.

ラヴェル その素顔と音楽論

2008年12月14日日曜日

ラヴェル その素顔と音楽論 マニュエル・ロザンタール著 伊藤制子訳
株式会社 春秋社 ISBN 4-393-93144-0 C0073

この本は指揮者であり、ラヴェルの唯一の弟子に当たるマニュエル・ロザンタールが師モーリス・ラヴェルの素顔をごく間近から見て書かれた本です.
歴史上にはバッハ、モーツァルト、ベートーベンを始め、偉大な作曲家が数多くいますが、私にとって一番好きな作曲家はフランス近代の作曲家、モーリス・ラヴェルです.ラヴェルというとバレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲を最高傑作とすることが多く、また演奏される回数も多いと思います.ただ、私は何となくそのような評価に対して(特に最後の「全員の踊り」の場面の熱狂に対して)違和感を持っていました.ロザンタールはラヴェルの最も輝かしい才能を「優しさ」としています.私は「マ・メール・ロア」、「バイオリンソナタ」、「優雅で感傷的なワルツ」などをラヴェルの最上の作品と思っていましたが、なるほど「優しさ」という言葉でくくることがでるのかと気づかされました.
本書にはこの他にもラヴェルの大変好ましい人間性を示すエピソードが綴られており、読んでいて心が温かくなる本です.ラヴェル好きはもちろん、その他の方にも是非読んで頂きたい一冊だと思います.

ビッグ・ファーマ

2008年12月3日水曜日

ビッグ・ファーマ 製薬会社の真実
マーシャ エンジェル著 篠原出版新社 ISBN 4-88412-262-3

ビッグ・ファーマとはアメリカの巨大製薬企業のことをさしています.筆者は医学界で一番メジャーな雑誌であるNew England Journal of Medicineの元編集長.ここまで書いても大丈夫なの?と読んでいる方が心配になるくらい赤裸々にアメリカの巨大製薬会社の実態を暴いた本です.現在、一般の企業、業界では経済至上主義は当然のことですが、本書を読むと、医療がどのようにあるべきかということが本来の姿である医学界がむしろ経済の都合によって方向付けられるというような本末転倒の事態が起こっていることがわかります.また、製薬業界のうたい文句をそのまま信じるのはあまりに無邪気であることもよくわかると思います.日本の製薬業界の方はもちろん、医者も患者も必読の書といえます.

山川健次郎の生涯

2008年11月4日火曜日

明治を生きた会津人 山川健次郎の生涯 白虎隊士から帝大総長へ
星亮一 筑摩書房 ISBN 978-4-480-42383-2

今年は、ノーベル賞を日本人4人(南部陽一郎氏は米国籍ですが、そうはいってもやはり日本人でしょう)が受賞し、暗いニュースの多い中、多くの日本人が元気をもらったことと思います.その中の一人、南部陽一郎氏の源流ともいえる、東京大学の物理学の開祖がこの山川健次郎です.とはいっても、この本は、物理学者としての山川健次郎を描くのではありません.山川は1歳若かったために白虎隊には入れず、それゆえ幕末を生き残こりました.しかし、会津藩の人々は賊軍として、薩長が牛耳る藩閥政治の明治時代にさまざまな苦難を受けます.山川はそのような状況の中で学者としての頂点である、東京帝国大学の総長を2回つとめることになるのです.本書では山川のみならず、会津の人々の幕末から明治にかけての苦難が描かれ、涙なくしては読めない本です.それゆえ、決して人前ではなく、そっと一人で読んで頂きたいと思います.山川のような人間に私は憧れ、またそうなりたいと思います.皆さんは如何でしょうか?

東大理学部小芝ホールの正面に山川健次郎氏の銅像があります。小芝ホールには小芝氏、梶田氏のノーベル賞の賞状とメダル(レプリカだとは思いますが。ちなみにノーベル財団から1人3個までメダルのレプリカが作ってもらえるそうですのでその中の1個なのでしょうか?)が見られます。

慢性の咳

2008年10月19日日曜日

10月16日に開院いたしましたが、おいで頂く患者様の中に慢性の咳という方が複数いらっしゃいます.慢性の咳とは8週間以上続く咳と定義されています.咳については日本咳嗽研究会というのがあって、そのホームページには咳に関する情報がコンパクトにまとめられています.
一般の方向けのページもありますので、一度ご覧になるとよいかもしれません.
http://netconf.eisai.co.jp/cough/index.html

内覧会

2008年10月13日月曜日

本日は、朝10時から内覧会を開始いたしましたが、近所の方々、これまで拝見させて頂いていた患者様、医師会の先生方など多くの方にご来院いただき、終了の午後3時を過ぎるまで、切れ目なく、院内を紹介させて頂きました.この場をお借りし、本日のおいでに感謝申し上げます.16日の開院に向けて、スタッフ一同、結束を強めることができたと思います.16日の開院に向けて、明日はシミュレーションです.

音盤考現学、音盤博物誌

2008年10月11日土曜日

音盤考現学 片山杜秀 株式会社アルテスパブリッシング ISBN 978-4-903951-04-1
音盤博物誌 片山杜秀 株式会社アルテスパブリッシング ISBN 978-4-903951-07-2

毎日、天気が日替わりで、気温も上がったり下がったり、私も少し風邪気味です.この本は少し前に買っておいた本なのですが、開業準備に追われ時間的というよりは精神的に余裕がなく、なかなか読めなかった本です.
この本で、著者は1枚のレコード、CDを糸口に様々な思考、深読みを行っていきます.比較的、現代の曲あるいは作曲家を扱ったページが多く、現代音楽に親しんでいるとはいえない私には、そういった箇所はピンとこない面もありました.しかし、私の知っている作曲家、曲の部分は大変面白く、こういう切り口でくるのか、こう考えるのかとハッとさせられることが多くありました.
「ジャングル大帝」、「新日本紀行」、のだめがプルチネッラから迷い込んでしまう「今日の料理」などのテーマ音楽の作曲者、冨田勲の本質の章、 背筋のピンとした朝比奈隆の章などは特になるほどとうなってしまいました.是非、ご一読を!

食べ物とがん予防

2008年9月23日火曜日

食べ物とがん予防 健康情報をどう読むか
坪野吉隆著 文春新書 242 文芸春秋 ISBN 4-16-660242-X

この本は産業医の講習会に出席した際に、講師の先生のお話の中で推薦があり、読んでみました.
少し前に比べれば、マスコミにおける健康番組、記事は少なくなったような気がしますが、まだまだ健康に関する番組、記事は多く、興味深く見るあるいは読まれる方も多いと思います.
タイトルからはがんの予防について書いている本と思われると思いますが、著者の真意は一言でいえばメディアリテラシー(情報メディアを主体的に読み解いて、必要な情報を引き出し、その真偽を見抜き、活用する能力のこと)を磨きましょうということだと思います.
こう書くと何か難しいお話の様に思われるかもしれませんが、実際の研究を具体的に一つ一つ述べられていて、しかもその研究の一つ一つが非常に興味深い例であるため最後まで一気に読める本だと思います.
少したとえを上げれば、受動喫煙(喫煙者周囲にいる人が自分の意志に関わらず間接的にタバコの煙を吸ってしまうこと)の疫学研究に対するタバコ企業の対応という研究、映画に登場するタバコの商品名の研究、アカデミー賞受賞者とそうでない人との寿命の差の研究など.研究というと難しく聞こえますが、こんなことも研究の対象になっているのかとも思えるようなさまざまな切り口からの研究が数多く紹介されています.
最後になりますが、著者の提案する『健康情報を評価するための6つのステップ』は是非、皆様に知って頂きたいと思います.