合剤、そしてアドヒアランス

2011年2月27日日曜日

2月18日、アルフレッサの勉強会で「配合剤、そしてアドヒアランス」というテーマでお話をしました.
合剤(あるいは配合剤)とは複数の薬を混ぜて1錠にした錠剤のことで、薬価が安くなる、薬剤が1錠少なくなるというメリットがありますが,一方でそれぞれの成分がわかりにくくなる、成分の比率が固定してしまいさじ加減ができないなどの問題点もあります.
皆様のご参考になれば幸いです.

バスキア、マイルス、バーンスタイン

2010年12月30日木曜日

今年ももうすぐ終わります.今年の年末はゆっくり映画を見て過ごそうと思っています.
先日、私の二男のお薦めの映画「バスキア」を見ました.ジャン=ミシェル・バスキアはニューヨークのストリートペインディングから出発して有名になった画家ですが,1988年に薬物依存により27歳の若さでで亡くなりました.
映画の中でバスキアに初めてスポンサーが付き,アトリエが与えられ、そこで絵を描き始める場面がありますが,その背景に、マイルス・デイヴィスの名盤「kind of blue」の中の一曲、「flamenco sketch」が使われています.バスキアの人生の中での一瞬の平安な時間を思わせる印象的なシーンです.
30年も前からこの曲は知っていたのですが,改めてこの曲を調べてみると、作曲者はなんとバーンスタインと書いてあります.更に調べると、ブロードウェイミュージカル「On the Town」(1944)の中の一曲「Some Other Time」と言う曲とのことでした.「On the Town」はその5年後にジーン・ケリー、フランク・シナトラの主演で映画化され「踊る大紐育」のタイトルで公開されています。
この映画は既に見ていましたから、すでに原曲を聞いていて、気がつかなかったのかと思いましたが,実はブロードウェイ版から映画化される際に、バーンスタインの音楽は観客には難しいとされ、3曲を残してすべて差し替えられてしまい、映画の中ではこの曲は使われていませんでした.
「On the Town」は第二次世界大戦中、24時間の休暇を貰った3人の水兵がニューヨークに上陸し、3人の女性と知り合い、分かれ、再び戦地に戻るまでのたった1日の休暇の物語です.この曲は3人がコニーアイランド(現在で言えばディズニーランドのようなテーマパーク)行きの地下鉄に乗って、もう時間が足りないことに気がついたときの歌です.歌詞は以下の通りです.

Twenty-four hours can go so fast,
You look around, the day has passed.
When you're in love,
Time is precious stuff;
Even a lifetime isn't enough.
Where has the time all gone to?
Haven't done half the things we want to.
Oh, well, we'll catch up
Some other time

This day was just a token,
Too many words are still unspoken.
Oh, well, we'll catch up
Some other time.
Just when the fun is starting,
Comes the time for parting,
But let's be glad for what we've had
And what's to come.
There's so much more embracing
Still to be done, but time is racing.
Oh, well, we'll catch up
Some other time.

Didn't get half my wishes,
Never have seen you dry the dishes.
Oh, well, we'll catch up
Some other time.
Can't satisfy my craving,
Never have watched you while you're shaving.
Oh, well, we'll catch up
Some other time.

Just when the fun's beginning,
Comes the final-inning...

Haven't had time to wake up,
Seeing you there without your make-up.
Oh, well, we'll catch up
Some other time.

Just when the fun is starting,
Comes the time for parting,
But let's be glad for what we've had
And what's to come.
There's so much more embracing
Still to be done, but time is racing.
Oh, well, we'll catch up
Some other time.

出典 https://www.stlyrics.com/lyrics/onthetown/someothertime.htm
過ぎ去った時間はどこに行ったの? 
私たちがやりたかったことの半分もしていないのに、 
ああ、そうだとしても、 
埋め合わましょう、 
いつかほかの時に。 

この日はほんのはじまりにすぎない 
言ってない言葉がとても多いの、 
ああ、そうだとしても、 
埋め合わましょう、 
いつかほかの時に。 

楽しみが始まったばかりのその時、 
さよならの時が来るの、 
でも、喜びとしましょう、私たちが体験したこと、 
それに、これから起こることを。 

抱き合うことよりもっと、 
まだやるべきことがあるのに、時間は迫ってくるの、 
ああ、そうだとしても、 
埋め合わましょう、 
いつかほかの時に。

出典 http://jazzsong.la.coocan.jp/Song06.html

それぞれの別れ、戦場に戻らなければならない兵士の気持ちなどの情感にあふれる歌でした.
映画「バスキア」あるいはマイルス・デイヴィスの演奏で聞いた柔らかな甘いイメージと、だいぶ印象が変わりました.
でも、詩を読んで再びこの曲を聴いてみると、本当にしみじみとした情感のあふれるとてもよい曲であることがわかると思います.

YouTubeでいろいろなバージョンが聞けます.

映画「バスキア」で使われていたマイルス・デイヴィスによるもの

作曲者バーンスタイン自身の歌声が聞けます

トニー・ベネットの歌が素敵です.

ビル・エバンスのバージョン

ビル・エバンスの別バージョン

アメリカの心

2010年11月30日火曜日

以前から気にはなっていた「アメリカの心」(学生社、絶版)をようやく手に入れました.
この本は1980年代にUnited Technology社の広告としてウォールストリートジャーナルに連載された文章75編を集めたものです.
この時期、第二次世界大戦後ずっとトップを走っていたアメリカはベトナム戦争に破れ、日本に追いつかれ、自信をなくした時代でした.そうした中で、日本に学ぶということから、日本の会社の「社風」という企業文化というものに眼を向けました.そうした,企業文化の現れとして企業広告としてのアドボカシー広告が現れてきます.アドボカシーとは会社の主張ということです.
今回はその中からお気に入りの一文を転載したいと思います.(こんな風になりたいという強い希望をこめて)

俺は仕事に誇りを持っている
もう
飽き飽きだ
アメリカ人の
仕事ぶり
に対する
絶え間ない
批判は.
他の人たちが
どんなふうに仕事をしようと
俺の知ったことではない.
ただ俺は誓って
いい仕事をしている
俺はそれを知っているんだ.
これまでに
俺は自分のスキルを
磨き上げた.
一刻も
無駄にしていない.
時に失敗すれば
ただちに
それを訂正する.
喜んで
俺の名前を
俺の仕事のひとつひとつに
サインしてあげよう.
俺はこれから
このメッセージを
俺の仕事場の
壁にかけ
俺のボスや、
お客や、
同僚に
俺が
自分の仕事に
誇りを持っているってことを
知らせてやるんだ.

シャブリエはいかが?

2010年11月29日月曜日

シャブリエ(Alexis-Emmanuel Chabrier 1841-1894)は19世紀フランスの作曲家です.一番有名で、皆さんがよく耳にするのは狂詩曲「スペイン」でしょう.私もこの曲はよく耳にしておりましたが、特別素晴らしい曲とは思っていませんでした.
最近,彼のピアノ曲も聞いてみようということで絵画的小曲集(Dix Pieces Pittoresques)を聞いてみました.全10曲からなる曲集なのですが、その他の曲はいずれとしても第6曲、牧歌(Idylle)がとても素晴らしく、皆さんにも是非聞いて頂きたいと思いました.YouTubeでも数々の演奏がアップロードされております.この曲は3本のメロディーラインからできているのですが、その線が一番きれいに聞き取れるのはPierre Barbizetの演奏だと思います.

2020年12月28日現在、Pierre Barbizetの動画が削除されておりましたので、代わりにAlfred Cortotの演奏を選びました。

IMSLPに楽譜もアップロードされています.( http://imslp.simssa.ca/files/imglnks/usimg/6/6e/IMSLP10673-Pièces_Pittoresques_(complete).pdf )楽譜を見ると、右手が2本のメロディーラインを担当している使い方がモーリス ラヴェルの「亡き王女のためのバヴァーヌ」と似ています.この辺をさして「私は大いに欠点を認めている。あまりにも明白なシャブリエの影響と、かなり貧弱な形式と」とラヴェル自身が述べたのでしょうか?
それにしても、前々回にお書きしたラモーのパスピエといい、ビゼーのアルルの女第一組曲のメヌエット(フルートソロで有名な第二組曲のメヌエットではなく)といい、今回のシャブリエの牧歌といいフランスの作曲家はどうしてこういう音楽を思いつくのだろうかと感心します.フランス音楽は素晴らしいと思います.

Rameau Platee Passepied & Tambourin
ビゼー アルルの女 第一組曲 メヌエット

結婚式に行ってきました

2010年11月28日日曜日

今日、我がクリニック受付のSさんの結婚式が行われ,行ってきました.
会場へ向かう道々、本当に朝から快晴で雲一つなく、空は真っ青に抜けるような青さで、街路樹のいちょうが黄色に色づき、本当にきれいな「日本の秋」を感じさせる日でした。
今日は、初めての主賓ということで、スピーチもありちょっと緊張しました.
それにしても、ご親族は別として、ゲストは皆お若い方ばかりで、もしかしてゲスト中最高齢?ということで、自分もこんな年になってしまったのかと、これなら主賓も当然かと納得したようなちょっとびっくりのような気分でした.
結婚式は教会で行われ、その後の披露宴では、早々にスピーチも無事終了し、ほっとしました.主賓のスピーチが済むと、その後はいきなりお若い方々のパワーが爆発し,本当に肩の凝らない,親密な、楽しい披露宴でした.
それにしても、最近の若い方は、横のつながりが我々世代とは違い、もっと幅広いですね.こうしたネットワークに支えられた若い力が,現在の閉塞した日本の社会を変えてくれることを思わず期待しました.

ジャン=フィリップ・ラモーについて

2010年9月25日土曜日

1987年ですから、今から23年前になりますが、「アリア」というイギリスの映画がありました.この映画はヴェルディ、リュリ、コルンゴルト、ラモー、ワーグナー、プッチーニ、シャルパンティエ、レオンカヴァッロの8人の作曲家の10のオペラのアリアを題材に、当時の10人の監督がそれぞれ1つずつ、短篇映画を作るという企画でした.それぞれに監督の個性が現れて、とても楽しい映画でしたが、その中でもロバート・アルトマンの一編がとても印象的でした.この6番目のパートはラモーの歌劇「Abaris ou les Boreades」を題材にしています. 映像はもちろん面白いのですが、なんと言ってもラモーの音楽が非常に素晴らしく引きつけられました.嵐を思わせるティンパニ、何となく不安をかき立てるフラウトトラベルソの音などがとても印象的でした.

それ以後しばらくラモーの音楽とはご無沙汰しておりました.
先日、クリニックへの出勤のドライブ中にFMラジオから流れてくる音楽がバロックであるのに(バロックの森という番組でしたので)、なぜか不思議な和音が響き、思わず聞き入ってしまいました.なんと言う曲だろうとあとでインターネットの番組表を調べてみると、ラモーの歌劇「 Abaris ou les Boreades」のContredanse en rondauということで、なんと映画「アリア」と同じオベラの一曲であることが判りました.(これもYouTubeで聞くことができます.

ラモー( Jean-Phiippe Rameau )はバッハ、ヘンデルと同時代、ルイ15世時代のフランスバロックを代表する音楽家です.音楽はとてもドラマチックで特に和声がこの時代としては飛び抜けて進んでいると思います.歌劇「 Platée」からのPassepiedをお聞きいただくと、響きが明るく、軽快で、とても洒落ていて、これが本当にバロックの時代の曲なのかと思います.後のビゼー、ドビュッシーなどの先駆けであることがよく分かるのではないかと思います.

音楽を聴いた上で、上のラモーの肖像画と比べてみると、音楽の時代を超えた新しさがよく分かると思います.
是非、ご一聴を.

心臓画像クリニック飯田橋に行ってきました

2010年8月22日日曜日

これまで当院で心臓のCT、MRI検査の必要な方を紹介させて頂いており、大変お世話になっている心臓画像クリニック飯田橋の内覧会があり、今日、行ってきました.
まず、はじめに心臓のCT、MRI検査というと皆さんは、私も受けたことがある、あるいは、どこの病院でもCT、MRI装置があるではないかとお思いになるかと想像します.確かにCT、MRIの装置そのものはたいていの病院にあります.しかし、心臓のCT、MRI検査となると、心臓は常に動いておりますので、きれいな画像をとるためには、最高の性能の装置、最高の解析が必要となり、これはなかなかどの装置でも、あるいはどの病院でもできるというものではありません.
心臓画像クリニック飯田橋はそうした、心臓に特化したCT、MRI検査の施設としては日本で初めてという施設なのです.
クリニックに着いて、まず第一に寺島院長、小山先生とご挨拶をして、両先生ともに大変フランクでソフトなお人柄で、大変いい感じを受けました.挨拶もそこそこ早速、診察室のワークステーション上でCTの生の撮像データから冠動脈がわかりやすく見えるようになった解析結果までの実演をして頂きましたが、生データからおそらく1分以内に三次元画像が現れ、更に三次元画像上のそれぞれの冠動脈をクリックすると、その曲がりくねった冠動脈が一直線にまっすぐに伸ばされてどこが正常でどこが狭窄しているのかがはっきりと表示されるのにびっくりしました.私が、5年ほど前、日大駿河台病院の佐藤先生に冠動脈CTの撮影、解析を見せて頂いた頃は撮影した生データから冠動脈を起始部から順に末梢の方まで何カ所もクリックしてコンピュータに冠動脈である部分を指定してあげて初めてストレッチ画像ができましたので解析にはかなりの時間がかかっていましたが、解析ソフトの進化は想像以上でした.
次にMRIを見せて頂きましたが、胸と背中にディテクターを着けて撮るというのも初めて見ました.MRIの画像も大変きれいで、心筋の造影される様がくっきりと見え、心筋疾患(心臓の筋肉の病気)、心筋虚血(冠動脈の狭窄などにより心臓に血液が十分に行き渡らない状態)の検出にPETと同程度の感度、特異度ということで、今後、虚血の評価が必要な方にMRIを積極的に取り入れていこうと思いました.
これまで心臓CT、MRI検査というとどうしても限られた病院でしか検査ができず、検査を受ける方にとっても、私たち開業医にとっても依頼、外来受診、検査、結果の外来、その後にやっと我々に結果が届くということで通院回数、結果が出るまでの時間という点で不満がありました.しかし、寺島院長の情熱により、日本初の心臓専門の画像クリニックができ、検査の必要な方にとっても、私たち開業医にとっても簡単に検査依頼ができ、2-3日のうちに結果が出るということで、検査が本当に身近になり、恩恵がもたらされました.
これまでは入院して冠動脈造影でしかわからなかった冠動脈の解剖がほぼそれと同程度に入院をする必要がなく、痛い思い、あるいは安静を保つなどの苦痛もなく手に入るということは、特に虚血性心疾患の方、川崎病による冠動脈後遺症のある方、心筋疾患の方などにとっての最大の朗報だと思います.

伊藤博文について

2010年5月16日日曜日

 今回は「伊藤博文 知の政治家」(瀧井一博著 中央公論新社刊 中公新書2051 ISBN 978-4-12-102051-2)について書いてみようと思います.
 伊藤博文というとかつての千円札の肖像でおなじみで、初代内閣総理大臣ということは誰でも知っていますが、実際に何をした人なのかとなると、意外と知られていないのではないでしょうか.実際、2009年は彼の没後100年に当たりましたが、私の知る限り伊藤博文がマスコミで取り上げられるということもありませんでした.
 この本は新書というよりは、研究発表のような本なのでよくも悪くもかなり手応えがありました.これまで、私は伊藤博文を「遊び人」で、大久保利通の作り上げた官僚制度を堕落させた張本人のように思っていました.また、長州出身であるので、藩閥政治の一派と勘違いしていました.しかし、実際には、藩閥政治に対抗し、また、急進的な政党内閣論者とも一線を画する漸進的な方法で民主主義を目指していたことが明らかにされています.
 彼の考えのキーワードは「国民の知」、「シンクタンク的性格の政党」、「個別の利害の代表者としてではなく、国民全体の利害の代表者としての議会」、「党利党略ではなく、公正な内閣」ということになります. 
 「国民の知」とは、国民の知的水準が高く、法によってその権利、限界が示されている文明国家であること、国民は実学により冨を生むことにいそしむ一方、政治にも関心を持ち国家の統治をチェックし方向付けるということ.
 「シンクタンク的性格の政党」とは政党は知性を持った国民の代表者を糾合した組織で、国民の考えを政府に伝達し、政策知を検討し、その実現をめざす今で言えばシンクタンクのような性格であり、いたずらに党利党略に走ったり、勝敗を競うようなことはいけないということ.
 「個別の利害の代表者としてではなく、国民全体の利害の代表者としての議会」とは、各地域、あるいは職能の代表として選ばれた議員も、一旦議会に赴けばそれを忘れて国民全体の利害で動かなければならないということ.
 「党利党略ではなく、公正な内閣」とは、いかなる政党が政権をとっても、政党に関係なく人事を行い、公平な政治を行い、国民の生活、国の利害のみに関心を持たなければならないということ.
 現在の政治状況に眼を向けると、国民(そしてマスコミ)、政党、議会、内閣いずれのレベルでも伊藤博文が目指したレベルは実現されていないことがとても寂しく思われます.このような状況であるからこそ、もう一度、伊藤博文に眼を向けることは意義があることと思います.

薬剤溶出性ステント植え込み後の二重抗血小板薬療法の期間は?

2010年4月22日木曜日

Duration of Dual Antiplatelet Therapy after Implantation of Drug-Eluting Stents

April 15, 2010 N Engl J Med 2010; 362:1374-1382

 現在薬剤溶出性ステントが全盛ですが、1年までは抗血小板薬2剤を用いることになっております.しかし、その後に関してはどうなのかよくわかっておりません.私の周囲の動向を見ると1年を過ぎた後も2剤を使い続けている場合が多いように見受けます.
 今回のNew England Journal of Medicineの論文では2701人の薬剤溶出性ステント植え込み後1年を経過した患者をアスピリン+クロピドグレルとアスピリン単独群に分けて19ヶ月間、心筋梗塞および心臓死をプライマリーエンドポイントとして観察しました.
 その結果、アスピリン+クロピドグレル群で1.8%、アスピリン単独群で1.2%がエンドポイントに到達しました.一方、ステント血栓症の発生には有意差は認められませんでした.つまり、薬剤溶出性ステント後1年を超えて抗血小板薬を2剤使ってもステント血栓症は減らせず、かえって心筋梗塞、心臓死の危険が増加したという結果に終わりました.
 現時点では、抗血小板薬2剤を1年以上使う根拠はなさそうですね.