週刊文春の表紙あるいは和田誠氏のイラスト

2019年12月11日 水曜日

クリニックで待合室の雑誌として週刊文春を置くようにしております。その1冊の表紙がアブストラクトの絵画のようですが、何か心に引っかかりました。(それが上の絵です。)

よく見ていただくと黄色い線の中にはFREMONT STREETなど、どうも通りの名前と思われる文字が書かれています。もっとよく見ると真ん中の白い図形の中にO.K. CORRALと書いてあります。

OK牧場と気が付いていただけましたか?

もっとよく見るとDoc HollidayとかWyatt Earpとか小さく書いてあり、映画「OK牧場の決闘」の舞台や登場人物の配置のイラストであることがわかると思います。

OK牧場がこんな形をしていたということに初めちょっとびっくりしました。もっともcorralは牧場と訳されていますが、英語の辞書では「牛や馬を一時的に入れる柵がこい」とのことなのでこの形であったり、周囲の店々の間に存在することが納得いきます。現在で言えば駐車場のようなものなのでしょうね。

各登場人物がこんな風に配置されていたこと、牧場に隣接する店々の名前など、細かく見て行くうちにこのイラストの仕組みが分かってきて、とても楽しくなりました。

そこで、映画のロケーション、人物の配置図が何でこんなに楽しいのかちょっと考えて見ました。

皆さんも鉄道模型とかジオラマに心惹かれた経験があるのではないでしょうか?私の結論としてはジオラマを2次元化し、その中の各パーツを抽象化するとこのイラストになるのではないかと考えました。

江戸切り絵図を見て昔の江戸の姿を想像したり、サザエさんの家の構造から磯野家の様子を想像したり、小津安二郎の東京物語に登場する家の構造を考えて登場人物がどのように生活しているかを考える本が色々出版されていたと思いますが、それら全てがジオラマのもつ楽しみに共通する楽しみであると思います。

ローマ教皇 長崎 爆心地公園でのスピーチ

2019年11月24日 日曜日

ローマ教皇フランシスコが来日されました。以下、スピーチを引用しますが、オバマ前大統領のノーベル平和賞受賞時のこれが本当に平和賞をもらった人のスピーチなのかと思ってしまうような酷いスピーチとは比較になりません。とにかくこのスピーチを一読していただくようにほぼ全て引用のようなこの文章を書きました。

(以下 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191124/k10012189341000.html?utm_int=detail_contents_news-related_001 より引用)

ローマ教皇庁が発表したフランシスコ教皇のスピーチ全文は以下のとおりです。

教皇の日本司牧訪問
教皇のスピーチ
核兵器についてのメッセージ
長崎・爆心地公園
2019年11月24日

愛する兄弟姉妹の皆さん。

この場所は、わたしたち人間が過ちを犯しうる存在であるということを、悲しみと恐れとともに意識させてくれます。近年、浦上教会で見いだされた被爆十字架とマリア像は、被爆なさったかたとそのご家族が生身の身体に受けられた筆舌に尽くしがたい苦しみを、あらためて思い起こさせてくれます。

人の心にあるもっとも深い望みの一つは、平和と安定への望みです。核兵器や大量破壊兵器を所有することは、この望みへの最良のこたえではありません。それどころか、この望みをたえず試みにさらすことになるのです。わたしたちの世界は、手に負えない分裂の中にあります。それは、恐怖と相互不信を土台とした偽りの確かさの上に平和と安全を築き、確かなものにしようという解決策です。人と人の関係をむしばみ、相互の対話を阻んでしまうものです。

国際的な平和と安定は、相互破壊への不安や、壊滅の脅威を土台とした、どんな企てとも相いれないものです。むしろ、現在と未来のすべての人類家族が共有する相互尊重と奉仕への協力と連帯という、世界的な倫理によってのみ実現可能となります。

ここは、核兵器が人道的にも環境にも悲劇的な結末をもたらすことの証人である町です。そして、軍備拡張競争に反対する声は、小さくともつねに上がっています。軍備拡張競争は、貴重な資源の無駄遣いです。本来それは、人々の全人的発展と自然環境の保全に使われるべきものです。今日の世界では、何百万という子どもや家族が、人間以下の生活を強いられています。しかし、武器の製造、改良、維持、商いに財が費やされ、築かれ、日ごと武器は、いっそう破壊的になっています。これらは途方もないテロ行為です。

核兵器から解放された平和な世界。それは、あらゆる場所で、数え切れないほどの人が熱望していることです。この理想を実現するには、すべての人の参加が必要です。個々人、宗教団体、市民社会、核兵器保有国も、非保有国も、軍隊も民間も、国際機関もそうです。核兵器の脅威に対しては、一致団結して応じなくてはなりません。それは、現今の世界を覆う不信の流れを打ち壊す、困難ながらも堅固な構造を土台とした、相互の信頼に基づくものです。1963年に聖ヨハネ23世教皇は、回勅『地上の平和(パーチェム・イン・テリス)』で核兵器の禁止を世界に訴えていますが(112番[邦訳60番]参照)、そこではこう断言してもいます。「軍備の均衡が平和の条件であるという理解を、真の平和は相互の信頼の上にしか構築できないという原則に置き換える必要があります」(113番[邦訳61番])。

今、拡大しつつある、相互不信の流れを壊さなくてはなりません。相互不信によって、兵器使用を制限する国際的な枠組みが崩壊する危険があるのです。わたしたちは、多国間主義の衰退を目の当たりにしています。それは、兵器の技術革新にあってさらに危険なことです。この指摘は、相互の結びつきを特徴とする現今の情勢から見ると的を射ていないように見えるかもしれませんが、あらゆる国の指導者が緊急に注意を払うだけでなく、力を注ぎ込むべき点なのです。

カトリック教会としては、人々と国家間の平和の実現に向けて不退転の決意を固めています。それは、神に対し、そしてこの地上のあらゆる人に対する責務なのです。核兵器禁止条約を含め、核軍縮と核不拡散に関する主要な国際的な法的原則に則り、飽くことなく、迅速に行動し、訴えていくことでしょう。昨年の7月、日本司教協議会は、核兵器廃絶の呼びかけを行いました。また、日本の教会では毎年8月に、平和に向けた10日間の平和旬間を行っています。どうか、祈り、一致の促進の飽くなき探求、対話への粘り強い招きが、わたしたちが信を置く「武器」でありますように。また、平和を真に保証する、正義と連帯のある世界を築く取り組みを鼓舞するものとなりますように。

核兵器のない世界が可能であり必要であるという確信をもって、政治をつかさどる指導者の皆さんにお願いします。核兵器は、今日の国際的また国家の、安全保障への脅威からわたしたちを守ってくれるものではない、そう心に刻んでください。人道的および環境の観点から、核兵器の使用がもたらす壊滅的な破壊を考えなくてはなりません。核の理論によって促される、恐れ、不信、敵意の増幅を止めなければなりません。今の地球の状態から見ると、その資源がどのように使われるのかを真剣に考察することが必要です。複雑で困難な持続可能な開発のための2030アジェンダの達成、すなわち人類の全人的発展という目的を達成するためにも、真剣に考察しなくてはなりません。1964年に、すでに教皇聖パウロ6世は、防衛費の一部から世界基金を創設し、貧しい人々の援助に充てることを提案しています(「ムンバイでの報道記者へのスピーチ(1964年12月4日)」。回勅『ポプロールム・プログレッシオ(1967年3月26日)』参照)。

こういったことすべてのために、信頼関係と相互の発展とを確かなものとするための構造を作り上げ、状況に対応できる指導者たちの協力を得ることが、きわめて重要です。責務には、わたしたち皆がかかわっていますし、全員が必要とされています。今日、わたしたちが心を痛めている何百万という人の苦しみに、無関心でいてよい人はいません。傷の痛みに叫ぶ兄弟の声に耳を塞いでよい人はどこにもいません。対話することのできない文化による破滅を前に目を閉ざしてよい人はどこにもいません。

心を改めることができるよう、また、いのちの文化、ゆるしの文化、兄弟愛の文化が勝利を収めるよう、毎日心を一つにして祈ってくださるようお願いします。共通の目的地を目指す中で、相互の違いを認め保証する兄弟愛です。

ここにおられる皆さんの中には、カトリック信者でないかたもおられることでしょう。でも、アッシジの聖フランシスコに由来する平和を求める祈りは、私たち全員の祈りとなると確信しています。

主よ、わたしをあなたの平和の道具としてください。
憎しみがあるところに愛を、
いさかいがあるところにゆるしを、
疑いのあるところに信仰を、
絶望があるところに希望を、
闇に光を、
悲しみあるところに喜びをもたらすものとしてください。

記憶にとどめるこの場所、それはわたしたちをハッとさせ、無関心でいることを許さないだけでなく、神にもっと信頼を寄せるよう促してくれます。また、わたしたちが真の平和の道具となって働くよう勧めてくれています。過去と同じ過ちを犯さないためにも勧めているのです。

皆さんとご家族、そして、全国民が、繁栄と社会の和の恵みを享受できますようお祈りいたします。

降圧薬は「就寝前」に服薬すべき?

2019年11月10日 月曜日

高血圧の方を拝見する場合に、出来る限りご自分でご家庭で朝と晩に血圧を測定していただくようにしております。そうすると、大抵の方は朝が高く、夜が低いと言うパターンになります。特に飲酒をしている方ではその傾向が著しいと思います。その場合に朝の血圧を抑えるために、就寝前に降圧薬を服用していただくことをしております。

今回、降圧薬は起床後ではなく、就寝時に服用するとよいかもしれないという研究結果が、ビーゴ大学(スペイン)アトランティック研究センターのRamón Hermida氏らによって発表されました。降圧薬を就寝時に服用すると、特に夜間の血圧が低下し、起床後の服用に比べて心筋梗塞脳卒中心不全の発症リスクやこれらの心血管疾患(CVD)で死亡するリスクがほぼ半減すると報告されました。

https://academic.oup.com/eurheartj/advance-article/doi/10.1093/eurheartj/ehz754/5602478

 この臨床試験は、「Hygia Chronotherapy Trial」と呼ばれ、2008年から2018年にかけて、スペイン北部在住の18歳以上の高血圧患者1万9,084人、平均年齢60.5歳を平均6.3年間追跡し、全ての降圧薬を朝内服する群と、就寝前に内服する群に2分割しました。そして、それぞれの群での心血管疾患の発症、死亡を比較しました。

上の図が結論のグラフで、降圧薬を就寝前に内服することにより、朝内服よりも様々な疾患の危険が半分近くに減少していることを示しています。

これまで私達が自分の経験に基づいて行っていた治療法の正しさが裏付けられた結果だと思います。

ホームページを一新しました

2019年11月10日 月曜日

今回、私のパソコンのOSがバージョンアップされ、これまでホームページ作成に使っていたiWebが使えなくなってしまいました。そのため、急遽、WordPressにホームページを移植することになりました。

いろいろとドメインの移管など面倒な手続きがありましたが、なんとか無事に移植が完了し、今、こうしてご覧いただいているようなホームページになりました。

iWebはスマホには対応していなかったのですが、今回のWordPressではPC用に作成しても、自動的にスマホ用に要素を再配置してくれますので、スマホで見やすいホームページになったと思います。

これを機に、しばらくお休みしてたブログの更新もまた、コツコツとして行こうかなと考えております。

どうぞよろしくお願いいたします。

久石譲とビートルズ

2018年8月26日 日曜日

 帰宅するために車を運転していると、iPodから久石譲のメロディーが流れてきていました。曲は次々と変わり、「人生はメリーゴーランド」が流れてきました。僕の大好きな曲なのですが、車の中、高速運転中なので、結構な騒音の中で聞いているわけですが、何か曲の後ろに別な音楽が聞こえて来るように思います。繰り返して聞いて見ると、やはりメインのメロディー、伴奏の他にそれとは直接関係ない別なリズムや楽器の音が聞こえてきます。

 早速、家で静かに聞き直して見たのですが、やはり主なメロディーの裏にいろいろな楽器が、メインのメロディーとは別の音程やリズムで無関係風に重なって聞こえます。その重なりによって、聞いている僕は例えば遊園地やサーカスなどのただ中にいて、こちらである音楽がなっていて、遠くからはまた別な曲がもっと小さい音で重なって流れているように複数の音楽が同時に耳に入ってくるような感覚に陥り、まさに自分が遊園地あるいはサーカスの真っ只中にいるような感覚にとらわれます。

残念ながら2020年12月28日現在、元となるYouTubeの動画は削除されてしまいましたので音声ファイルをアップいたします。

 ピアノがソロでテーマをゆっくりと1度演奏し、テンポを上げてもう1回目テーマを繰り返し、その後の展開部の途中から徐々に弦の音、打楽器、木管楽器、金管楽器がメインの伴奏のようだったり、メインの曲とは無関係な顔をしたりしてピアノの裏にちょこちょこ入ってきます。曲の中ほどで、序奏が繰り返され、ピアノソロがかっちりとメインテーマを繰り返し、その後、ピアノとオーケストラの合奏になったところ以下が今度は初めの時とは違ってもっと大手を振ってメインのメロディー、伴奏以外のいろいろな音がとても複雑に重ねられています。

 でも、この感覚はどこかで感じた覚えがある。そう思ってよく考えてみると、どうもビートルズのような気がする、そして、ビートルズの音楽的な時期を考えるとSgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Bandの頃の1曲ではないかと推定し、Youtubeで確認して見ました。やはりありました。Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Bandの中の一曲、Being for the Benefit of Mr. Kite!のオーケストラ、オルガンのインストルメンタルな伴奏の部分がワルツを演奏しているのですが、その裏に別なリズム、メロディーが重ねられて遊園地、サーカスのような感覚を醸し出していました。

「Being for the Benefit of Mr. Kite!」

 おそらく、久石氏はこの曲を聞いていて、そこに「人生はメリーゴーラウンド」編曲のインスピレーションがあるのではないかと感じました。

 その推測からWikipediaの「久石譲」の項目を調べて見ました。4歳から鈴木バイオリンに通ったバイオリン少年だったことなど、これまで知らなかったことがたくさん書いてあって、なかなか面白かったのですが、次のような一節がありました。

 中学生の時、ビートルズの音楽に新鮮なショックを受け、ほとんどの曲をギターで弾けるようになったが、高校生の時からクセナキスシュトックハウゼン武満徹黛敏郎らの作品に取り憑かれ、現代音楽作曲家を目指すようになる。

出典 https://ja.wikipedia.org/wiki/久石譲

 というようなわけで、やはり久石氏は Being for the Benefit of Mr. Kite!を聞いていたに違いないと思います。また、そのほかの情報を調べてみると、久石譲著書「感動はつくれますか?」(2006年)という中で、ハウルの動く城の誕生秘話が書かれています。それによると

『交響組曲 ハウルの動く城』は、名門チェコ・フィルハーモニー管弦楽団が演奏し、トラックダウン(音の仕上げ)はロンドンのアビーロード・スタジオ。あのビートルズで有名なアビーロード・スタジオで録ったのである。

出展 https://hibikihajime.com/blog/25526/

 なんと、ハウルの動く城も Being for the Benefit of Mr. Kite!も同じ、ロンドンのアビーロード・スタジオで録音されていました。

 久石氏がビートルズからの影響を自分の音楽を埋め込んでいるということに初めて気がつき、芸の細かさに感動した1日でした。

追伸

 ここで書いている「人生はメリーゴーラウンド」はサウンドトラックに限っての話です。ライブ、その他の編曲ではそういう音は全く入っていません。

生命保険業界の新たな試み

2018年8月13日 月曜日

 今年の特別な猛暑の中、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

 お盆休みでのんびりとテレビを見ていたら、南アフリカのDiscovery社のVitalityという保険を日本の保険会社がタイアップして扱うことになったというニュースが流れていました。

 この新しい保険の仕組みは蓄積されたデータベースから予想される確率に対して保険料を支払うという従来の保険に対して、自分が健康的な生活(食事、運動)をするかどうかにより保険料が−30%から+10%の範囲で上下するというもので、これまでの受動的な保険に対して能動的な保険と言えると思います。

 我が身を振り返ると、自動車があればそれで移動した方が歩くより楽ですし、美味しいものがあればそれを飲んだり食べたりしますし、それが人間の本能だと思います。経済的に余裕があれば 運動が不足し、過食になるのはある意味、 必然と思われます。

 その一方で、地球上では経済的に恵まれない地域でかなりの割合の人が飢餓に苦しんでいます。

 従来、肥満、生活習慣病などは個人の問題とされ、日本でも生活習慣病対策として特定健診、指導などが行われ、ちょうど10年となりました。しかし、どれだけの効果があったかは明らかにされておりません。また、医療費の削減よりも検診費用の方が大きくなるのではとの疑問の声も当初からありました。

 私としてはこのような問題は個人の問題ではなく、富、食料、その他の地球規模の不均等分布の問題と考えていました。

 しかし、現在の資本主義、自由主義の世の中では、このような不均等分布は必然と思われます。例えば余計な消費(あるいは輸入)に対してはなんらかのペナルティを課す、必要最低限のものについては課税対象外にするなど、このような不均等な消費を社会的に食い止めるような対策が必要なのではないかと考えていました。

 今回の保険は、運度をすればするだけ保険料が安くなる、野菜、果物については割引制度というインセンティブを加えることにより、従来、単に運動をしなさい、こういう食事をしましょうと指導していたのよりはるかに効率的に運動、食事の問題に切り込んだと言えます。また、それにより保険会社は保険金支払いの面でメリットがあり(そうでなければこのような商品は成り立たないことになります)、国にとっても国は一銭も使わずに医療費削減につながる可能性があります。

 ニュースでは南アフリカの平均寿命63歳に対して、この保険に加入している人は81歳と大幅に寿命が長くなったと報じていました。(ただし、この保険に入れるようなクラスの平均寿命が63歳ということはないのではないかと思いますが.)

 いずれにせよ、公的な枠組みではなく、このような民間企業の枠組みにより先進国の肥満という問題に対しての一定のブレーキがかけられる可能性が示されたことは素晴らしいことだと思います。

 次に、飢餓の問題に対しても民間からの解決に向けたアプローチが考え出されるといいなと思います。

佐野市健康大学

2017年10月14日 土曜日

2017年10月12日、佐野市中央公民館で佐野市健康大学が開催され、私が「心臓病 知っておいた方がよいいくつかのこと」の題で1時間のお話をさせていただきました。天気の悪い中、多くの熱心な方々がお集まりになってくださいました。

 その時の内容をアップしたいと思います。お見えになれなかった方々、お話を聞いていただいた方々、どちらの方々にもご理解の助けになればと考えております。

人工知能と囲碁

2017年1月9日月曜日

 今回は人工知能による囲碁のお話です。囲碁のわからない方には全くつまらない話かと思います。ご容赦下さい。

 囲碁でコンピュータが人間に勝つのは、10年以上先のことと言われていました。

 2016年3月、GoogleグループのDeep Mind社が作り上げた人工知能、Alpha Goが囲碁ランキング世界1位の棋士イ・セドル九段を4勝1敗で打ち破り、コンピュータが史上初めて人間を破ったということで大変なセンセイションを巻き起こしました。

 2016年末には、ネットにGod Movesという打ち手が現れ、趙治勲名誉名人と1勝2敗と接戦を演じた日本製囲碁ソフトDeep Zenに対して1手5秒で打ち進め3連勝と圧倒しました。

 更にはMasterを名乗る打ち手が現れ、日中韓のトップ棋士を相手に60戦全勝という圧倒的な強さを見せつけました。1月5日、Google社はMasterがAlpha Goの改良版であることを公表しました。

 世界に冠たるGoogleグループが人工知能開発の材料として数あるゲームの中でも囲碁を取り上げたことがまず囲碁好きとしてはうれしいことでした。

 棋譜を見てみるとコンピュータはとにかく強いです。決して無理な手を打たず、一度も形勢不利な場面もなく、危なげなく勝っている印象です。コンピュータの打った手を見ていると囲碁では決して無理をする必要がなく、逆に無理に頑張るのはかえって自分が不利になってしまう危険が高くなるだけだということがわかります。

 次に、棋譜を見ていて、ヘボの私なりにコンピュータの打った手をいい手だな思うことがしばしばでした。囲碁というのは最終的な勝負は盤面でどれだけ広い面積を囲うかの勝負ですが、コンピュータは実利(とりあえずその時点で自分の地になる可能性が高いと思われる場所)よりも厚み(今後、相手の石を攻めたり、広い範囲に影響力を及ぼせるであろう状態)重視の手が多いという印象です。特にAlpha Goとイ・セドル九段との五局では宇宙流と言われる武宮正樹九段を彷彿とさせました。また、一見どういう手なのか意味がわからないような手が何手か進むと結果的に好手になっているという点では、江戸時代の本因坊道策を思わせます。

 今回の正体不明のMaster(おそらく人工知能とは推測されていましたが)の登場に対して、日中韓の錚々たるトップ棋士が進んで挑んで行ったこと、相手がコンピュータとわかり、コンピュータに敗れても相手の強さを率直に認め、最強の棋士が現れたかように喜んで受け入れ、囲碁の真理を求める手段としてポジティブに捉えていることに大変感動しました。故藤沢秀行九段は囲碁の神様が100わかっているとすると自分が分かっているのは6くらいとおっしゃったそうです。もともと日本の囲碁は江戸時代に本因坊家を中心に動いており、歴代の名人碁所(徳川幕府の認めた名人)は盤上一番価値の高い手を一手一手積み重ねて行き、淀みのない美しい棋譜を残すという姿勢であったように思います。もちろん勝負という面はありましたが、白番と黒番で何局か戦って勝ち負けを決める番碁が勝負の場でした。ところが明治期になりスポンサーの幕府はなくなり、主に新聞社をスポンサーとして一局ごとに読者に勝ち負けを見せるコミ碁(先手の黒に4目半から現在では6目半勝たねばならないというハンディキャップをつけ一局で勝負をつける)になり、盤上での真理の追求からコミを意識した打ち方、勝負というのがより重要な要素となり、近年の中国、韓国の棋士の台頭によりこの傾向が一層顕著となりました。そうした中で盤上の真理の追求はちょっと霞んでいた感がありました。

 今回の人工知能の出現で囲碁界全体が、勝負は勝負として、盤面の真理を追求する面に少し揺り戻されるのではないかと思います。

 これからMasterを始めとする人工知能の打った一手一手の理解が進み、囲碁の新しい常識、考え方を盛り込んだ囲碁の解説書が続々と出てくるのではないかと予想され、それを読むことができる日がとても楽しみです。

ベンジャミン・ブリテン 青少年のための管弦楽入門

2016年2月28日日曜日

 イギリスの作曲家、ベンジャミン・ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」は1945年に作曲され、ヘンリー・パーセルのテーマ(譜1)を元にオーケストラの各楽器で変奏してゆく曲です。パーセルのテーマをオーケストラの各楽器がフルート→オーボエ→クラリネット→ファゴット→ヴァイオリン→ヴィオラ→チェロ→コントラバス→ハープ→ホルン→トランペット→トロンボーン、チューバ→ティンパニー→大太鼓、シンバル→タンバリン、トライアングル→小太鼓、木魚→シロフォン→カスタネット、ドラ→ムチと次々にフィーチャーし、最後に全部の楽器で譜1に示したテーマ(テーマ Aとします)を変形したテーマ(譜2)( テーマA’ とします)に基づくフーガを演奏して締めくくります。それぞれの楽器の音色の違い、特徴などを分かりやすく解説されます。題名の通りクラシック音楽入門者のために作曲された曲です.私が子供の頃は小学校か中学校かは忘れましたが、音楽の授業で習いましたので、私と同年輩の方にはおなじみの曲だと思います。

譜1 テーマA (譜1は♭が1つ付いています イ短調)

譜2 テーマA’ (譜2は♯が2つ付いています ニ長調)

ネビルマリナー、NHK交響楽団の演奏です。

パーセルのアブデァザールからのロンド(Rondeau from Abdelazer)が原曲です。

 学校で習ってから特別にこの曲を聞き直すとかレコードを買うとかすることはなく、学校で習う曲ということで なんとなく軽く考えておりました。ところが、たまたまテレビでネビルマリナー、NHK交響楽団の演奏を聴いたところ、とてもすごい曲なのでびっくりしました。この曲はわかりやすいだけでなく、変奏がそれぞれの楽器の音色、特徴に合わせたとてもうまくできています。それよりも何よりも最後のフーガ、そのまた最後の二重フーガが感動的です。それまで初心者のためにシンプルに書いていた筆が一挙に爆発したような複雑で壮大なフィナーレだと思います。

 初めて二重フーガのフィナーレを聴いた時は、たまたま指揮者マリナーが3/4を3拍子に振っていたのですが、金管がその振りと別のテンポでパーセルのテーマを吹いていて、音楽が一体全体どういうことになっているのか全くわからなかったのですが、その後、スコアを探して確認し、二重フーガの構造がわかりました。(譜3)

譜3(いずれも♯が2つ付いています)

譜3の一段目はクラリネットですが、譜2のフーガのテーマ A’ をそのままに演奏しています。一方、譜5段目の金管は譜1のテーマ Aをそのまま演奏しますが、テーマAの2分音符が1小節に引き伸ばされ、譜3の6小節がテーマ Aの2小節分のメロディーになっています。(譜1を引き伸ばしたものを下に対比しました。)

 指揮者により金管のメロディーを小節単位で付点二分音符を1拍で振るタイプと、マリナーのように絃楽器、木管の3/4の細かいリズムを4分音符を1拍に振るタイプとがあるようです。前者のように付点二分音符を1拍に小節単位で振られた時に、絃楽器、木管楽器の細かい音符を揃えるのは私にとっては至難の技のように思いますが、プロにとっては何でもないことなのかもしれませんね。

 最後のフーガの部分のみのムービーですが、1969年、若き小澤征爾、シカゴ交響楽団の演奏で、私の中ではベスト1の演奏です。落ち着いたテンポでとてもきっちりした演奏です。何といってもシカゴ交響楽団のそれぞれのプレーヤーがとても上手くて、楽器から次の楽器へと変奏されたテーマがとても滑らかに引き継がれて行きます。よく考えてみると今から50年前の演奏ということになるわけですが、若き小沢の名演であり、フリッツ・ライナーに鍛え上げられた黄金時代のシカゴ交響楽団の実力がよくわかる演奏だと思います。2分3秒のところから二重フーガになります。(それぞれの楽器のフィーチャーされた部分部分にムービーが分割されていて、全部集めれば全曲になります)

Youtubeにはその他にもいろいろな演奏がアップされておりますが、代表的なものをいくつか

演奏のムービーはありませんが、ブリテン自身の指揮による演奏

プロムスでの演奏 これを見るとイギリス人はこの曲が大好きなんだなと判ります。この指揮者は最後の二重フーガを金管楽器のメロディーのラインを小節単位で振っています。

アンドレ プレヴィン指揮 スコアがついていますので、ぜひ二重フーガの部分(フーガが14分22秒から始まりますが、16分19秒から二重フーガになります)をスコアと共にお聞き下さい。弦楽器、木管の3/4拍子の16分音符ベースの細かい変奏の音形と金管の3/4拍子を付点8分音符ベースで4拍子的に動く主旋律とが並行して響く複雑さがよくわかります。

皆さん、最後の二重フーガの構造がお分かりになりましたでしょうか?

最近、アップされた動画です。サイモン ラトルが指揮をしいますが、最後の二重フーガの部分(2分57秒から)を3拍子で振っていて、これもわかりやすいと思います。

番外編

この曲を基にしたゲーム音楽もあるようです。

スーパーファミコンのWizardry Ⅴ ウィザードリィ5のOpening

スーパーファミコンのWizardry ⅤI ウィザードリィ6のOpening

Alfred Burtのクリスマスキャロル

2015年11月22日日曜日

 今年も街にはクリスマスの音楽が流れる季節となりました。クリスマスの音楽といえば昔ならジングルベル、最近ではチャイコフスキーのくるみ割り人形、賛美歌などですが、私のお薦めはAlfred Burtのクリスマスキャロルです。

 Alfred Burtは1920年に生まれ1954年、私の生まれる1年前に33歳の若さで亡くなったアメリカのミュージシャンです。ちょうど私にとっては自分の父親くらいの世代になります。

 彼は小さい時からコルネットを吹き始め、主にコルネット、トランペットを演奏し、特にジャズに興味を持っていたようです。

 彼の父親Bates Burtは牧師で、自作のクリスマスキャロルの詩やメロディーをクリスマスカードにして家族や信者の方に送っていましたが、1942年にその仕事を息子のAlfredに依頼しました。それ以後、Alfredがそれを書くことになり、そこからAlfred Burtのクリスマスキャロルが生まれました。

 彼のクリスマスキャロルはあくまで、彼のmailing listにある身近な人たちだけが知るものでしたが、1952年に著名な合唱団が彼の”Come, Dear Children”を歌って、その曲を大変気に入り、彼の曲を歌いたいということから地域の外に名が広まり、ハリウッドに知られる存在となりました。

 しかし、その翌年の1953年には、彼は健康を害し、精密検査の結果、末期の肺がんと診断されました。それを知ったコロンビアレコードの社長が彼のそれまでに作曲した作品に新作の3曲を加え、特別に合唱団を編成し彼の立会いのもと、彼の曲の最初のアルバム”Christmas Mood”が作られました。

 彼は1954年2月5日に最後の曲”Star Carol”を書き上げ、翌々日の2月7日に亡くなりました。

以下は彼の作曲した15曲のリストです。

1.”Christmas Cometh Caroling” (1942)

2.”Jesu Parvule” (1943)

3.”What Are the Signs” (1944)

4.”Ah, Bleak and Chill the Wintry Wind” (1945)

5.”All on A Christmas Morning” (1946)

6.”Nigh Bethlehem” (1947)

7.”Christ in the Stranger’s Guise” (1948)

8.”Sleep Baby Mine” (1949)

9.”This Is Christmas” (also known as “Bright, Bright, the Holly Berries”) (1950)

10.”Some Children See Him” (1951)

11.”Come, Dear Children” (1952)

12.”O, Hearken Ye” (1953)

13.”Caroling, Caroling” (1954)

14.”We’ll Dress the House” (1954)

15.”The Star Carol” (1954)

 現在、彼の15曲のキャロルはナット・キング・コール、ケニー・ロギンズ、ジョージ・ウィンストン、ジェイムズ・テイラー、サイモンとガーファンクル、シンガーズアンリミテッド、ジョン・ウィリアムズなど著名なミュージシャンによってレコーディングされています。

 現在、You Tubeで聞くことができる主なものは、以下の通りです。(自分の備忘録も兼ねていますのでちょっと長いリストになりました。)

 クリスマスに是非、御一聴ください。

Night Bethlehem Singers Unlimitedの超名演です。

Caroling, Caroling これもSingers Unlimitedの名演です。

Ah Bleak & Chill The Wintry Wind Bell Epoqueという日本人のコーラスグループの演奏です。

Caroling, Caroling Nat King Coleのヴォーカルです。

Caroling, Caroling とても現代風なアレンジです。

Some Children See Him ゴスペル調のアレンジです。

Some Children See Him ポップス調のアレンジです。

Caroling, Caroling

Caroling, Caroling, / We’ll dress the house

Star Carol

We’ll dress the house

All  on a christmas morning とても格調の高い演奏です。

Jesu Pervule

Christ in the Stranger’s Guise

Sleep Baby Mine

Come, Dear Children

Oh Harken Ye はじめに曲の説明が入り演奏は0:35から始まります。