人工知能と囲碁

2017年1月9日月曜日

 今回は人工知能による囲碁のお話です。囲碁のわからない方には全くつまらない話かと思います。ご容赦下さい。

 囲碁でコンピュータが人間に勝つのは、10年以上先のことと言われていました。

 2016年3月、GoogleグループのDeep Mind社が作り上げた人工知能、Alpha Goが囲碁ランキング世界1位の棋士イ・セドル九段を4勝1敗で打ち破り、コンピュータが史上初めて人間を破ったということで大変なセンセイションを巻き起こしました。

 2016年末には、ネットにGod Movesという打ち手が現れ、趙治勲名誉名人と1勝2敗と接戦を演じた日本製囲碁ソフトDeep Zenに対して1手5秒で打ち進め3連勝と圧倒しました。

 更にはMasterを名乗る打ち手が現れ、日中韓のトップ棋士を相手に60戦全勝という圧倒的な強さを見せつけました。1月5日、Google社はMasterがAlpha Goの改良版であることを公表しました。

 世界に冠たるGoogleグループが人工知能開発の材料として数あるゲームの中でも囲碁を取り上げたことがまず囲碁好きとしてはうれしいことでした。

 棋譜を見てみるとコンピュータはとにかく強いです。決して無理な手を打たず、一度も形勢不利な場面もなく、危なげなく勝っている印象です。コンピュータの打った手を見ていると囲碁では決して無理をする必要がなく、逆に無理に頑張るのはかえって自分が不利になってしまう危険が高くなるだけだということがわかります。

 次に、棋譜を見ていて、ヘボの私なりにコンピュータの打った手をいい手だな思うことがしばしばでした。囲碁というのは最終的な勝負は盤面でどれだけ広い面積を囲うかの勝負ですが、コンピュータは実利(とりあえずその時点で自分の地になる可能性が高いと思われる場所)よりも厚み(今後、相手の石を攻めたり、広い範囲に影響力を及ぼせるであろう状態)重視の手が多いという印象です。特にAlpha Goとイ・セドル九段との五局では宇宙流と言われる武宮正樹九段を彷彿とさせました。また、一見どういう手なのか意味がわからないような手が何手か進むと結果的に好手になっているという点では、江戸時代の本因坊道策を思わせます。

 今回の正体不明のMaster(おそらく人工知能とは推測されていましたが)の登場に対して、日中韓の錚々たるトップ棋士が進んで挑んで行ったこと、相手がコンピュータとわかり、コンピュータに敗れても相手の強さを率直に認め、最強の棋士が現れたかように喜んで受け入れ、囲碁の真理を求める手段としてポジティブに捉えていることに大変感動しました。故藤沢秀行九段は囲碁の神様が100わかっているとすると自分が分かっているのは6くらいとおっしゃったそうです。もともと日本の囲碁は江戸時代に本因坊家を中心に動いており、歴代の名人碁所(徳川幕府の認めた名人)は盤上一番価値の高い手を一手一手積み重ねて行き、淀みのない美しい棋譜を残すという姿勢であったように思います。もちろん勝負という面はありましたが、白番と黒番で何局か戦って勝ち負けを決める番碁が勝負の場でした。ところが明治期になりスポンサーの幕府はなくなり、主に新聞社をスポンサーとして一局ごとに読者に勝ち負けを見せるコミ碁(先手の黒に4目半から現在では6目半勝たねばならないというハンディキャップをつけ一局で勝負をつける)になり、盤上での真理の追求からコミを意識した打ち方、勝負というのがより重要な要素となり、近年の中国、韓国の棋士の台頭によりこの傾向が一層顕著となりました。そうした中で盤上の真理の追求はちょっと霞んでいた感がありました。

 今回の人工知能の出現で囲碁界全体が、勝負は勝負として、盤面の真理を追求する面に少し揺り戻されるのではないかと思います。

 これからMasterを始めとする人工知能の打った一手一手の理解が進み、囲碁の新しい常識、考え方を盛り込んだ囲碁の解説書が続々と出てくるのではないかと予想され、それを読むことができる日がとても楽しみです。

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